プリンセスウイングPvPのメタゲーム (脳内編)
はじめに
『武装少女RPG プリンセスウイング』は新紀元社より発売されているTRPG。
基本的にプレイヤーはGMの操作するエネミーと戦闘を行うのだが、なんとPvPができるとルールブックに明記されている。(PvPに関するルールは1ページしか書かれてないからオマケだと思うけど)
プリンセスウイングはしっかりデータが作りこまれているので、PvPをするなら自ずとキャラクター同士の相性や有利不利が発見され、「○○は強いが□□に弱い」といったいわゆる『メタゲーム』が発生するはずだ。
なんと誰もTwitterで呟いてないので俺がメタを回すのだ。
この記事はルールブックと2週間睨めっこして脳内で構築したメタゲーム予想を紹介し、実際にPvPに実戦投入した結果を記したものになる。
- はじめに
- PvPのルール
- メタゲーム予想
- ぼくのかんがえた最強の機体
- プレシャスブラスター絶対殺すマン
- ルーラーグレーテル型をメタる
- 行動値は正義
- 8点軽減をブチぶく方法
- トルネードの恐怖
- 脳内メタゲームの果て
- 実践編へ
PvPのルール
身内でプリンセスウイングのPvPをすることになったのは、2022年の9月ごろ。つまりは、プリンセスウイングの1冊目の追加サプリメント『ヴァルキリーアイランド』が発売されてからになる。
よって、今回使用可能なルールブックは基本とヴァルキリーアイランドに二冊。
その他、具体的なルールは以下の通り。
- ルールは基本的に基本ルールブックp124記載の内容に従う
- キャラクター作成は初期作成で行う
- プレイヤー2人 vs 2人
- 味方同士でお互いの手札の内容を教え合うことができる
- 戦闘開始前に、プレイヤー間での手札の入れ替えと、手札の引き直しはなし
メタゲーム予想
というわけで、上記ルールでPvPをやることになった。
PvPをやるからには、負けたくはない。なぜなら、負けると少なからずムカつくからだ。
負けないためには、まず『考えられる最強の機体』を作成し、それに負けないようにすれば負けないのだ。かしこいのだ。
ぼくのかんがえた最強の機体
最初に考えられた最強の機体が『プレシャスソード型』だ。
『プレシャスソード型』サンプルデータ
プリンセスコア:ラプンツェル
ウイングドライブ:ブルーウイング
特技:タクティカルステップ、マルチロック、グレイズウェポン
ライト♠ コスモスブレイド レフト♣ バインドアンカー トップス♡ ソードウイング ボトムス♢
カウンターフィールド バリエーション
ライト♠ ウェディンググローブ レフト♣ プレシャスブラスター トップス♡ マジカルシルクハット ボトムス♢ アドバンスドスラスター
PvPでない通常のセッションで猛威を振るっている、推定最強の環境機体。
一言でいうと、「連撃による攻撃性能」に極振りした機体で、エネミーとの戦闘がだいたい1ラウンドで決着つくのは『プレシャスブラスター』のせいである。
具体的には、1ターンで8点のダメージを6~8回ほど繰り返せるので50~60点は平然と出してくる。プレイヤーのHPは多くても50点ほどなので、余裕で即死する。
データの詳細を解説すると、まず『プレシャスブラスター』は手札を捨てると攻撃回数が増える武装である。
当然、手札が少ないと攻撃回数が減るのだが、この構成は『ソードウィング』と『マジカルシルクハット』でその弱点を補っている。
『ソードウィング』は「射程1」の武装で攻撃するたびに1枚カードを引く武装。
『プレシャスブラスター』は本来「射程3~4」なので、『ソードウィング』の効果を受けない。しかし、『マジカルシルクハット』は「武装の射程を広げる」効果を持ち、これにより『プレシャスブラスター』が「射程1~6」になり、「射程1」を含んでしまう。
よって、『プレシャスブラスター』で攻撃するたびに、カードを1枚引けるようになり、とんでもないダメージを出しながら、手札が減らないというおかしなことになるのだ。よくないのだ。
しかも、『マルチロック』で2体同時に攻撃してくるので、カードを引く数は2倍になるし、下手すれば2体同時に倒される危険性すらある。
まずは、『プレシャスソード型』を対策しないと、ゲームにすらならない。
行動値が高い方が先に動いて終わる。許してはいけない。
なぜなら、一方的に負けたら、少なからずムカつくからだ。
俺がメタを回して、コイツを殺さなければならない。
プレシャスブラスター絶対殺すマン
『プレシャスソード型』を一方的に封殺するために考案されたのが『ルーラーグレーテル型』である。
『ルーラーグレーテル型』サンプルデータ
プリンセスコア:グレーテルポット
ウイングドライブ:ホワイトウイング
特技:フィールドオブルーラー、ガードモーション、ディープブレス
ライト♠ フェアリーバックラー レフト♣ フェアリーバックラー トップス♡ テンペストウイング ボトムス♢
ルミナスコルセット バリエーション
ライト♠ フェアリーバックラー レフト♣ フェアリーバックラー
トップス♡ ディバイドリフレクション ボトムス♢ アサルトレッグ
『フェアリーバックラー』はダメージを2点軽減する武装である。
本来、『フェアリーバックラー』は2個しか装備できないが、『グレーテルポット』の効果で4個まで装備可能になる。
『フェアリーバックラー』を4個装備するとどうなるか。
2×4=8点 軽減する。
加えて『フィールドオブルーラ』は1ラウンド中、全ての攻撃の対象を自身にする特技である。範囲攻撃だろうが、どこに味方が居ようが、全ての攻撃を吸い込む。
『フィールドオブルーラー』はこの手のカバーリング系のスキルで、TRPG界1位を争うレベルで強い。
『フェアリーバックラー』と『フィールドオブルーラー』を合わせることで、どんな攻撃も吸い込んで8点軽減する。
『ルーラーグレーテル型』そういう機体である。
『プレシャスブラスター』の欠点はダメージが8点+αしか出せないことで、『ソードウイング』はダメージを与えないと効果を発揮しない。
8点以上のダメージを出せない『プレシャスブラスター』は「常に8点軽減する『ルーラーグレーテル』」に勝てない。
つまり、
『プレシャスソード型』 <<(超えられない壁)<< 『ルーラーグレーテル型』
これが『プリンセスウイング』に生まれた最初のメタゲームである。
この図式を発見した時は深夜だったが、あまりの興奮に私は布団に入っても眠れず、『ルーラーグレーテル型』のことで頭がいっぱいだった。
「面白くなってきたな。もっとメタを回して気持ちよくなろうぜ」
ただ、そんな思いだけが渦巻いていた。
時計は深夜3時。明日は仕事だった。
ルーラーグレーテル型をメタる
今回PvPで同卓する人たちは皆TCGプレイヤーであり、基本的に負ける気はない方々である。なぜなら、負けると少なからずムカつくからである。
彼らも私と同じように、色々を思考を巡らせて脳内メタゲームを回し、容易に『ルーラーグレーテル』までは辿り着くだろうと思った。
なので、次は『ルーラーグレーテル型』を対策する(メタる)必要がある。
『ルーラーグレーテル型』の対策案としては2案ある。
- 『フィールドオブルーラー』の効果を無視する
- 『フェアリーバックラー』×4のダメージ軽減を無視する
まずは、1.について。
今回のルールは2対2なので、ひとりが『フィールドオブルーラー』で味方を守り、もう一人が攻撃役を担う構成になると予想される。
『ルーラーグレーテル』は守りの機体であり、ダメージを弾くことはできるが、攻撃性能は皆無か低い。つまり、攻撃役さえ落としてしまえば、相手に勝ち手段がなくなるので事実上負けなくなる。
『フィールドオブルーラー』は全ての攻撃の対象を自身に変更するスキルだが、使用できるのはアクションフェイズであり、つまりは手番が回ってこないと使えない。
『ルーラーグレーテル』が動く前に攻撃すれば、『フィールドオブルーラー』の効果を無視できるのである。
行動値は正義
というわけで、行動値を上げまくればよいのだが、プリンセスウイングには案外と行動値を上げるスキルがない。
上を取って高火力で殴る戦法をやりづらくするためだろうか。(もしかしてPvPが考慮されている…!?)
その中でも、簡単に行動値をあげる方法としては、『アポロウイング』がある。
『アポロウイング』はシナリオ1回しか使用できないが、味方と自身の行動値を3あげる破格の性能を持つ。
「3」という数値は行動値上ではかなり大きく、『アポロウイング』を使用すれば、味方と共に相手の上を取ることができるだろう。
自身が攻撃役なら、相手の『フィールドオブルーラー』より先に攻撃できるし、盾役なら相手の攻撃より先に『フィールドオブルーラー』を発動できる。
『アポロウイング』最強か!?と思ったが、ここで問題が発生する。
行動値をあげる手段が乏しすぎるので、高確率でお互いに『グレーテルポット』で『アポロウイング』することになり、行動値が一緒になるのだ。
行動値が一緒になるとどうなるか。
ダイスを振ってランダムに先に動く方を決める。
つまりは運ゲーになる。
最初から運ゲーになるのは嫌だった。極力避けたい。
なぜなら、「運」だけで負けたら少なからずムカつくからだ。
私が世界で3番目に嫌いなのはポケモンの「こんらん状態」だ。
行動値が上を取られても何とかるようにしなくてはならない。
それは、私が少しでもムカつかないための唯一の方法だった。
8点軽減をブチぶく方法
『ルーラーグレーテル型』の対策案としては2案ある。
- 『フィールドオブルーラー』の効果を無視する
- 『フェアリーバックラー』×4のダメージ軽減を無視する
2.の方を考える。
8点軽減を無視する方法はたくさんある。
『フェアリーバックラー』は「武装攻撃」によるダメージを軽減するだけなので、要は武装攻撃以外でダメージを与えればいい。
簡単に思い付き、かつ強力なのが『衝突型』である。
プリンセスウイングでは、相手のいる方向へ移動すると、お互いに3点のダメージを受ける『衝突』が発生する。
この『衝突』によるダメージは「武装攻撃」ではないため、『フェアリーバックラー』で軽減できない。
『衝突』のダメージを増やす手立ては色々とあり、『アディショナルブースター』と『発光』で簡単に1回の衝突で8点出せるようになる。
『プラズマブースター』で4マス移動できるので、4 × 8 =32点。強い。
近づいて、『衝突』する。それだけで容易に『ルーラーグレーテル』は突破できる。
よって、
『プレシャスソード型』 <<(超えられない壁)<< 『ルーラーグレーテル型』< 『衝突型』
……そう考えていた時期が私にもありました。
トルネードの恐怖
実は『衝突』は簡単に止めることができる。
サプリメント『ヴァルキリーアイランド』から追加された新要素に『オブジェクトルール』がある。
戦闘マップ内に『オブジェクト』と呼ばれる障害物を設置するルールなのだが、『オブジェクト』にも様々な種類が存在し、個性豊かである。
そんな中に『トルネード』という『オブジェクト』がある。
『トルネード』の効果は下記の通りである。
このオブジェクトの周囲全方位1マスにいるキャラクターは、移動タイミングで移動を行う際、このオブジェクトの周囲全方位1マス以外のマスに移動できない。
要は移動を封じる効果である。
幸い(?)移動タイミングでの移動を制限するだけなので、『プラズマブースター』では移動ができる。しかし、通常の移動がなくなると、そもそも隣接するのが厳しい。
今回のルールでは、最短8マス離れた状態でゲームが始まる。
通常の移動が封じられている状態で、8マスも離れていると接敵までに2ラウンドはかかる。攻撃を始めるのが、あまりにも遅すぎる。
『トルネード』以外にも、バッドステータスで移動力が下がったりすると、途端にきつくなる。そもそも、相手が移動する武装を持っているだけで近づくのがしんどい。
つまるところ、『衝突型』は相手の構成に左右されやすい。苦手とする武装をひとつでも相手が装備していた場合、とたんに厳しくなる。(先ほど例に挙げた『トルネード』も武装1つで設置可能)
それでも、『ルーラーグレーテル』にダメージを通せる構成ではあるので、採用しようかと考えてはいた。
だが、まだあるはずだ。『ルーラーグレーテル』にダメージを与える方法は。
ルールブックを隅から隅までめくり、最終的に私が採用したのが『クロックグレーテル』である。
脳内メタゲームの果て
『プレシャスブラスター』も『ルーラーグレーテル』も『衝突型』も。
考えられたすべてを対策した、脳内メタゲームの終わり。
それこそ、この『クロックグレーテル』だ。
『クロックグレーテル』サンプルデータ
プリンセスコア:グレーテルポット
ウイングドライブ:サクラウイング
特技:フィールドオブルーラー、ガードモーション、タクティカルステップ
ライト♠ アーミラリークロック レフト♣ アーミラリークロック トップス♡ ダブルバレルウイング ボトムス♢
アドバンススラスター バリエーション
ライト♠ アーミラリークロック レフト♣ アーミラリークロック
トップス♡ ミラージュジャマー ボトムス♢ シールドレイザー
『アーミラリークロック』を4個装備する。
それが私の答えであり、この機体のコンセプトである。
『アーミラリークロック』はカードを引くたびに、「相手に2点のダメージを与える」、「常時発動」の武装である。
『アーミラリークロック』が発生させる2点ダメージは、武装攻撃ではないので、『ルーラーグレーテル』の8点軽減を無視できる。
しかも、カードを引くだけでダメージを与えられるので、手札を消費せずに攻撃が行える。つまりは、手札を攻撃ではなく、回避に用いることができる。
運用方法としては、最初に『サクラウイング』を使用し、『アドバンススラスター』を3回発動し、カードを3回引く。
これにより、3 × 2 × 4 = 24点のダメージを誰かに与えることができる。
ダメージは他の環境機体に比べると控えめだが、射程が事実上無限だし、『フィールドオブルーラー』の効果を無視できるので、盾役ではなく攻撃役を直接攻撃することができる。
しかも、「手札を増やしながら」だ。
増やした手札は回避のために使ってもいいし、『シールドレイザー』で手札を捨てることで、ダメージを捨てた枚数分軽減し、捨てた枚数分誰かにダメージを与えられる。
一言でいうなら、「カードを引いてガン待ちするクソ機体」。
それが『クロックグレーテル』である。
これこそ、プリンセスウイングPvPを終わらせ、クソゲーにしてしまう最強の機体だと、ほくそ笑みつつ、私は布団に入った。その日はぐっすり眠れた。
ただ、PvP当日が楽しみだった。
早く、このクソ機体でクソゲーがしたい。お披露目したい。
ああ、楽しみだな……
実践編へ
ここまで述べたのは全て「私の脳内」での出来事である。
実際に、PvPの結果はどうなったのか。脳内メタゲームは正しかったのか。他のプレイヤーはどんな機体を持ってきたのか。プリンセスウイングPvPはクソゲーだったのか。
PvPの内容とその総括は『実践編』(まだ書いてない)へ続く。